阪神淡路大震災30年「私たちは悲劇を共有し、残酷さに寄り添えるのか?」
1995年1月17日、阪神淡路大震災が発生しました。「ボランティア元年」と言われたその震災では、神戸YMCAは今でいう「ボランティアセンター」の機能を果たし、人道支援に当たりました。長田にあった会館が半壊し、地震後の火災が街を襲う中、人々がYMCA会館に集まってきました。助けを求める声も、安否確認も、支援の申し出も、「ボランティア」という言葉が一般的ではないからこそ、社会システムが停止しても、YMCAのような社会的な団体が自然と、その役割を担うようになったのです。
それから30年の間に、たくさんの自然災害が起こりました。中でも2011年3月11日、東日本大震災では、地震と津波の被害に加え、原発事故の被害も拡大しました。2020年の東京五輪が「復興五輪」だと言っていたことも忘れ去られたように、「未曾有の大災害」も多くの人々にとっては、遠い過去のものか、若い世代にとっては「知らない災害」なのかもしれません。
そして昨年2024年1月1日、能登半島地震が起こりました。「少子高齢化」という日本が抱える課題が顕著な地域で大規模な災害が発生しました。元旦の出来事ということもありましたが、発災直後の対応は、これまでの震災の経験が生かされ、迅速かつ手厚いものになったとは、到底言えるものではありませんでした。
その中でも機能的に見えたのは、災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)でした。DMATは阪神淡路大震災で、もっとよく動けていれば500人の命を救えた可能性があるとして、災害時にすぐに動けるように体制を整えていました。「待機基準」という基準をもとに、誰の指示も待たず災害支援に動けるからです。「すぐに動く」。それが医療チームの最大の反省だったのです。
神戸YMCAでは2024年1月7日に、キャンプディレクターが現地に入りました。遠征や野外生活技術を活かして、徒歩でしか到達できない孤立地域に支援物資を運びました。歩荷と言います。そしてそれから断続的に現地に向かい、能登町ボランティアセンターにて支援活動をすることとなりました。大学生を中心とした支援チームは、津波被害もあった能登町を活動拠点に、瓦礫の撤去や家財の片付けを行いました。また能登町白丸地区公民館では避難所時の炊き出し、そして仮設住宅での生活が始まってからはクリスマス会のイベントを行うなど、活動を継続しています。
この度、阪神淡路大震災の30年という節目に、能登地震によってあらわになった社会の脆弱性にもう一度注目するとともに、「残酷さに寄り添えるのか」というテーマで、イベントを開催いたします。
開催概要
日 時:2025年1月18日(土)14時〜
第一部 「能登半島地震とボランティアセンター」
ゲスト:浜田孝昭氏(能登町ボランティアセンター)
浜田さんはオンライン出演、インタビュー式。
発災直後からボランティアセンターの立ち上げと運営について、陣頭指揮に当たっている浜田さんにお話を伺います。「政治家とボランティアは来ないで」という幻想が広がっていた時、現地でどんな思いでおられたのか?自らも被災しながらの支援活動は?また現在の状況などをインタビュー形式でお伺いします。
聞き手:阪田晃一(キャンプディレクター)
第二部 「私たちは悲劇を共有し、残酷さに寄り添えるのか」
リチャード・ローティはこの世界を生きることは、言語による世界体験に依存することから、今の境遇を生きているという世界体験それ自体が「偶然性」によるということを、各人が弁えよと言います。だからいつでも他人の視座に立てるようにせよ。これを「アイロニー」と読んでいます。そして、偶然性に左右される僕たちは、「何が幸せ(正しい)か」ではなく「残酷さ」に寄り添うことで「連帯」できると言う。主著『偶然性、アイロニー、連帯』で示されていることです。
では残酷さに寄り添い、偶然性をアイロニカルに乗り越え、生きていこうとするその力はどこから湧いてくるのか。映画作品から議論したいと思います。
力の思想家ニーチェは「悲劇の共有」こそ力を生むと説きます。だから敏感なクリエーターたちは、それを芸術作品によって受け継いできました。キム・ギドク監督が自ら撮影・編集・監督した作品『STOP(2017)』は、原発の悲劇と人々が負うべき責任「原罪・贖罪」について描かれています。強烈です。それに比べると映画『遺体 明日への十日間(2012)』は原作こそ鬼気迫るルポではあるものの、映画としては軟弱です。主演俳優の異常なまでの感情移入と迫真の演技が希望ですが、その西田敏行さんも昨年亡くなりました。
以上のコンテンツを参考に、実際に阪神淡路大震災(1995)、東日本大震災(2011)、能登半島地震(2024)との関わりから、「私たちは悲劇を共有し、残酷さに寄り添えるのか」というテーマについて議論します。
話し手:阪田晃一(キャンプディレクター)、山本亮司(キャンプディレクター)
参考コンテンツ:
『STOP(2017)』キム・ギドク監督
『遺体 明日へ十日間(2012)』君塚良一監督
『太陽の蓋(2016)』佐藤太監督
ディスカッション:
阪神淡路大震災(1995)、東日本大震災(2011)、能登半島地震(2024)との関わりから議論する。
会場:神戸YMCA三宮会館
参加費:無料
参加方法:現地に直接お越しください。一部オンライン配信も予定しています。
第一部オンライン配信URL
https://www.youtube.com/live/aI-kAayQipY
第二部オンライン配信URL
https://www.youtube.com/live/pXX0ZCi8U0k